2014年7月26日土曜日

【45】怪獣ノーザンソウル

 そういえば、ここでお伝えしてなかったのですが、2月に発売した「ノーザンソウル・ディスクガイド」(シンコーミュージック刊)に執筆で参加しております。

 
 
 30枚のシングル盤を紹介しています。
 執筆作業は楽しくもとても大変で、けっこう煮詰まった時期もあり、ある時心の師・神戸ヌードレストランのDJイズミさんに電話で相談しました。

 「俺、何書いたらいいんですかね?」

 それに対してのイズミさんの答えは、こうでした。

 


 「ウッシは怪獣好きやから、曲の良さを怪獣に例えたらええんちゃうん?」

 


 さすが生粋のモダニスト。こちらの予想の斜め80度くらいを行く回答に面食らいましたが、僕としてはイズミさんのアドバイスをまさか無視するわけにもいかず、「そうっすね!そうかその手がありましたね!」。
 実際にMARY SAXTONのシングル紹介の項で、ノーザンソウルに無理やり怪獣をぶっこむという離れ業に挑んでおります。興味のある方は是非チェックしてみてください。


 そんなわけで寝ても醒めてもノーザンソウルのことばかり考えているわたしですが、怪獣も大好きです。
 物心ついたときから中学生2年くらいまで、今のノーザンソウル熱と同じくらい怪獣に夢中になっていました。
 幼稚園~小学校低学年の時などは、公園の砂場で「ウルトラマン博士」と呼ばれ、周囲の尊敬を集めていたものです。
 あれ以来、他人から尊敬された記憶が特にないので、あの公園の砂場の頃が自分のピークだったのでは。と思うときもあります。
 で、小学校高学年にもなればふつうみんな怪獣は卒業します。ある朝、「おい、今度のゴジラは新怪獣と戦うらしいぞ!」なんて教室に駆け込んでも反応は冷ややか。「あれ、みんなどうしたんだろう。」と思うわけです。
 気づいたらみんな、歌謡曲のヒットチャートを追いかけたり、ファッションを追いかけたり、あるいは女の子を追いかけるようになっていたのです。
その頃まだ母親が買ってきた服を着ていた僕は、孤独に怪獣を追いかけるようになりました。
 それでも小学校のうちはまだ話しの出来る友がいましたが、中学生にもなるといよいよ自分ひとりだけになります。
 中学男子ってふつうみんなジャンプの最後らへんに載ってる広告ページにある通信販売のギターとか気になってくる年頃のはずですが、自分は夢の中でも怪獣が出てくるくらい、いつも怪獣のことを考えていました。
 周囲に背を向け、ひたすら自分の信じるものを追うその姿は、60年代の後半に、流行やトレンドに流されるロンドンのシーンに背を向け、ひたすらレアな米国のブラック・ミュージックを追い求めた英国北部の若者たちの姿を思い出させた・・・・というのはもちろんこじつけですが、でも頑張ってたと思います。


 中学2年でビートルズに出会い、いったん怪獣は卒業(遅すぎ)するのですが、成人してくらいからまた「やっぱ、いいよな。怪獣。」と怪獣愛が復活し、昔のようにソフビ人形やらポスターやら買い込むことはさすがにないですが、DVDや名画座なんかでまめに作品を鑑賞して楽しんでいます。

 特にここ5年くらいは昭和の邦画ばかり観ているので、「日本映画としての怪獣映画」としての視点で観るととても再発見が多く、「怪獣が出てこなければ映画でない」なんて思ってた?頃には到底わからなかった楽しみがあります。5060年代の作品なんかは特に登場人物のファッションや街並みも楽しいし、女優さんの美しさを堪能するのもガキの頃にはなかった視点。というか最近は怪獣よりもそっちばかり観てるかも・・・・

 いや、そんなことはない。やはりメカゴジラ(昭和)が登場するシーンとか気が狂いそうなくらい興奮するし、「故郷は地球」をこないだ久しぶりに観たら見終わった後しばらく体を震わせて泣いた。

 

 そして先日、ついに怪獣とノーザンソウルという、自分が人生を賭して追い求めてきた全く違う文化二つが、一枚のレコードにて交差したのです!

 もちろんそんなレコードがまともなレコードなわけがないので、今日はキワモノ盤紹介!



THE MOONS/ "GAMMERA"

 


 大映が世界に誇る?大亀怪獣ガメラ。今回紹介するのは、第一作の「大怪獣ガメラ」が米国で公開されたときの挿入歌のシングルでございます。


 

 65年公開。米国での公開が1966年、題名は”GAMMERA THE INVINCIBLE”。シンプルのそのまま英語にした感じですね。


 
 ガメラといえば、東宝のゴジラ大ヒットにはじまる怪獣ブームに対し、大映のワンマン社長永田雅一が「ウチも怪獣やるぞ」とムリくり作った怪獣映画なわけですが、同じように便乗した他社の怪獣(日活のガッパ、松竹のギララ)がぱっとせずに終わったのに対し、ガメラはゴジラに逼迫する人気を集め、その後もシリーズ化されたのはご承知のとおり。空を飛ぶ亀の怪獣というかなりの冒険な存在であるのに知名度が高いのも人気の高さがうかがえます。
 平成にも復活し(僕はリアルタイム世代!)、昭和版が子供向けな内容だったのに対して、オタクが作ったオタクのための映画というべきその内容は高い人気を誇ります。


 実はこのレコードを手に入れる少し前に、ブルーレイでこの映画を観返したばかりで運命的なものを感じました。久しぶりに観たガメラ、ブルーレイの画質も美しいし、丁寧に作られているなとやはり関心しましたが、大映の名優船越英二は明らかに演技手抜いてる感が・・・。特に記者会見のシーンは、変な間合いがあって「カンペ見てないですか??ねえ、カンペ見てますよね??」と映画に集中できなかったよ。

 あと子供の味方ガメラなわけですが、第一作に登場する少年の名前がトシオ君で親近感。でもガメラに出てくるガキって見ててイライラすんだよな・・・。トシオ君もけっこう無茶やっててホント、イライラしましたね!!

 では、音楽の話に行きます。


 
 動画の15秒目くらいからスタートなんですが、怪しげな音が鳴り響く、なかなかかっこいい、ガレージィなノーザン・インストロになっていると思いますがいかがでしょう。始まって3秒で"BATMAN"のパクリだとわかるのはご愛嬌。 

 THE MOONSなるグループですが、おそらく名前だけのスタジオグループだと思います。ウラ面は「ガメラ~~」のコーラスがないインストバージョンですが、最初からインストみたいなもんじゃん・・・トホホ。
 こういうガレージテイストなノーザンはけっこう昔から根強い人気があり、最近のKEB DARGEなんかのRockabillyやTittyshakerの路線とも相性がいいですね。

 で、劇中のどこでこの曲がかかるかですが、ヒマなアメリカ人がなんとフルでアメリカ公開版をアップしてくれてたので一応ここにも貼っておきます。このあいだ観たばっかりなのにまた観ちゃったよ。米国公開版はあっちの俳優が出ている新撮シーンもけっこうあります。



 曲が使われているのはこの動画でいうとちょうど一時間くらいのシーン。ガメラが東京を破壊する、映画のハイライトともいえるシーンです。
 時はエレキブーム真っ只中、ガメラが来てるのにそっちのけでディスコで踊り狂う若者たち。日本版ではどっかの日本のエレキバンドが演奏してる音楽が使われてますが、アメリカ版ではその音楽がこのTHE MOONSの曲に丸々差し替え!!非常に画面にマッチした、日本版よりカッコいい名シーンとなっています。これは観てよかったな。ありがとう、ヒマなアメリカ人。
 警察が「ガメラが来てるぞ!逃げろ!!」と注意しに来るのですが、エレキ狂いの若者は「そんなの知るか!俺たちを止めることはできないぜ!」とそのまま踊り狂い、ガメラが建物を壊して下敷きになってたぶん死にます。

 エレキなんかにうつつをぬかしてるとこうなるぞという製作者のメッセージを感じます。


 僕も、ノーザンソウルで踊ってときに怪獣が来ても、おそらくそのまま踊ってる予感がします。踊りながら死ねるなら本望かな。

 そういうわけで、ホント自分のためにあるようなシングルでした。1000円なり。
 ピクチャースリーブ付もあるらしく、それがカッコイイのでそれも欲しくなってきました・・・。でも調べたらけっこう高値なんですよ。PS付きは。

 

 

 でもDJで使うとき、あるかなぁ~~~~~。



 <おまけ>

 50年代~60年代のNYの広告代理店を舞台にした、アメリカの人気ドラマ、「MADMEN」で、登場人物がこの"GAMMERA"を映画館に観にいくシーンがあります。クリスマスの日に諸事情あって家にいれない主人公と、イギリス人の同僚が「せっかくだから映画でも見に行こう。何がやってる?」と調べて観にいくのがなんと「ガメラ」笑。なかなか笑えるシーンです。ガメラも画面にけっこう出てきます。
 フル動画もいっぱいあがってるので、アメリカのオタクにはけっこう人気なのかなあ。


 

2014年7月2日水曜日

【45】Tower Of Strength

 今日も明日も明後日も犬のように這いつくばって働き、へとへとになって帰宅するのだが、部屋に入る前にポストの中身を確認するかどうかは些細ではあるがなかなか重要な問題だ。

 人間というのは、疲れててもポストを確認できる人間と、できない人間に分かれる。

 僕はというと、時期によって変わる、という感じか。つまり、レコードを海外から買ったりしてて、そろそろ届くな、という頃になると、きっと郵便局の不在届けが入ってるからこまめにポストを見る。
 一日何回も見る時もある。プリーズ MR.POSTMAN~ルッカンシー、なんてハナ歌も歌いながら快調そのもの。

 しかしお金が無くてレコードが買えない時期や、欲しいものがなくて買わない時期などはうちのポストは荒れ放題。荒れていくと更に開けるのがおっくうになるという悪循環に陥る。
 だいたい、そういう時期はポストを見てみてもロクなものがはいってない。「この日までにこのお金をここに支払いなさい」とか、「来月からこの料金がこれだけ値上がりします」とか、「この神様を信じなさい」だの。もしくはピザの宅配サービス(嫌いではない)、または若い女性の宅配サービス(利用したことはないがそんなに悪くないものだと聞いている)など、気が滅入るものばかりだ。恋文とかファンレターが入っていることは、無い。まさにミックジャガー氏がいうところの「USELESS INFORMATION」ってやつだ。

 かといって、「その手には乗らないぜ」とそのUSELESS INFORMATIONに完全無視を決め込んでも、ある日シャワーを浴びようとカランをひねっても冷水しか出ず「ひゃあ。ひゃあ。」と一人孤独に悶絶する羽目に陥ったり、または思い切って冷蔵庫に貼ってあったチラシを頼りにピザを注文したら、店員に「その商品は冬限定でとっくに販売終了となっております」など冷たく言い放たれたりする。

 世知辛い世の中。

 だからポストは常に中身を空にしておくのが好ましいのだが、本当にもうそんな気力も無いくらい、へとへとに疲れきっている時だってあるだろう。

 そんな時に聴きたい曲がある。



GLORIA LYNNE / YOU DON'T HAVE TO BE A TOWER OF STRENGTH (EVEREST)




 ノーザンソウルといえば、63、4年以降の、アップテンポなビートの音楽をイメージする人が多いと思うし、それももちろん間違いではないのだが、イギリスのノーザンソウルシーンではそういう枠にとらわれない本当に多様なサウンドが同じ「ノーザンソウル」として認識され、親しまれている。

 それを面白いと思うか、意味が分からないと思うかで、その後のその人のノーザンソウル人生は決まるといってもよい。

 その多様なサウンドの中には、いわゆる「アーリーソウル」と一般的に呼ばれるサウンドの曲調のものも人気だ。「アーリーソウル」も定義が少し難しいが、おおまかにいえば言葉どおりソウルミュージック黎明期、つまり「ソウルミュージック」という言葉が使われる前の音楽で、その後のソウルの原点となった音楽のこと。バンドサウンドというよりも、オーケストラ、流麗なストリングスなどが使われていたりポピュラー寄りな音なのが主な特徴か。例えばSAM COOKEが遺した音楽などは、ほとんどが「アーリーソウル」といってよいだろう。OTIS REDDINGMGsをバックに箍が外れたようにガッタガッタいうようになる前の、あくまでまだポピュラー音楽のひとつとしての黒人音楽であり、よってある種の抑制が効いているわけだがそこがまたいいんである。

 ノーザンソウルシーンでこういうアーリーソウルや、R&Bなどソウル以前の音楽のサウンドが急激に人気になったのはやはり80年代、Staffordで開催されていた"TOP OF THE WORLD"のDJ(GUY HENNIGANともちろんKEB DARGE)のディスカバー・選曲によるところが大きいだろう。70年代にWIGAN CASINOなんかで人気だったアップテンポなストンパーから、こういったある意味「渋い」(あまり好きな言葉ではない)サウンドへの変化は、ノーザンソウルの歴史におけるもっとも重要なシフトチェンジであったという人は多い。




 今回紹介するのはジャズ・シンガー、GLORIA LYNNE61年録音。お聴きの通りしっとりと歌い上げた曲だが、アップテンポでダンスにも向いている、そのためノーザンソウルとしても人気である。Staffordで好まれていたようなサウンドともまた異なるが、はまるとなんだか中毒性のある曲だ。
 曲はバート・バカラックによるもので、ソウルというよりはポップスといったほうが正しいかもしれない。前途のとおりジャズシンガーであるから、いかにもな作品といえるだろう。

 Gene McDanielsのヒット曲「Tower Of Strength」へのアンサーソングである。もちろんそれもバート・バッカラックが作曲で、まあこの原曲はこの際どうでもよいのだが「TOWER OF STRENGTH」という言葉は気になる。直訳すれば「強さの塔」なわけだが、まあ「強さのカタマリ」って感じかな?
 Geneの曲は大まかにいうと、弱い男の歌だ。僕はTower Of Strengthになりたい、そして君に君の事なんか愛してないんだ、といって、ひざまづいて許しをこう君を背にドアを開けて出て行きたい、でも僕はそんなに強い男じゃない、という内容の歌詞である。

 Gloriaは、「あなたはTower Of Strengthになる必要はない、英雄になんかなならなくていいの」と歌う。あなたがして欲しいことはなんでもするから、それよりわたしを抱きしめて、絶対にはなささないで、とGloriaは続ける。

 ぐっときますよねえ。男性諸君。


 本当ならこういう科白を、和服の美人、例えば若尾文子や山本富士子なんかの昔の大映の女優さんなんかいいですな。に、お酌をしてもらいながら言ってほしい気もするが、もちろんそんなことはないし、今のところ大映時代の若尾文子や山本富士子を自宅に宅配してくれるサービスもなさそうなので、結果このレコードを家で独り聴くことになる。

 へとへとになって疲れきって帰ってきて、このレコードに針を落とすと何だかとてもホッとします。

 明日も頑張りましょう。


 

 ・・・・というわけで、しれっとものすごく久しぶりの更新となってしましましたがこのまましれっと終わります。今後は頑張ります!


 さて次のDJ情報です。

 NIGHT FOX CLUBは7/26土曜日です!影のレギュラー、ADAMも今回参加で盛り上がること間違いないですね。フライヤーはDEE CLARK!

 安定のノーチャージです、是非遊びに来てくださいね。



NIGHT FOX CLUB
Rare 60's Danceable Northern Soul Drop&Moves,
Motown,R&B & 70's Soulful Dancers
http://nightfoxclub.blogspot.jp/

Sat 26th JULY 2014 
Start 19:00~Until 23:30 
@Menphis Kyodai SHIMOKITAZAWA
Admission FREE!!!
http://memphis-kyoudai.blogspot.jp/

DJs
Stormer Tamai (Stormer & THE STOLEN HEARTS)
Akira Sekiguchi
uCjima (DOTS'n'LINE)
Adam Tore
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