2014年7月2日水曜日

【45】Tower Of Strength

 今日も明日も明後日も犬のように這いつくばって働き、へとへとになって帰宅するのだが、部屋に入る前にポストの中身を確認するかどうかは些細ではあるがなかなか重要な問題だ。

 人間というのは、疲れててもポストを確認できる人間と、できない人間に分かれる。

 僕はというと、時期によって変わる、という感じか。つまり、レコードを海外から買ったりしてて、そろそろ届くな、という頃になると、きっと郵便局の不在届けが入ってるからこまめにポストを見る。
 一日何回も見る時もある。プリーズ MR.POSTMAN~ルッカンシー、なんてハナ歌も歌いながら快調そのもの。

 しかしお金が無くてレコードが買えない時期や、欲しいものがなくて買わない時期などはうちのポストは荒れ放題。荒れていくと更に開けるのがおっくうになるという悪循環に陥る。
 だいたい、そういう時期はポストを見てみてもロクなものがはいってない。「この日までにこのお金をここに支払いなさい」とか、「来月からこの料金がこれだけ値上がりします」とか、「この神様を信じなさい」だの。もしくはピザの宅配サービス(嫌いではない)、または若い女性の宅配サービス(利用したことはないがそんなに悪くないものだと聞いている)など、気が滅入るものばかりだ。恋文とかファンレターが入っていることは、無い。まさにミックジャガー氏がいうところの「USELESS INFORMATION」ってやつだ。

 かといって、「その手には乗らないぜ」とそのUSELESS INFORMATIONに完全無視を決め込んでも、ある日シャワーを浴びようとカランをひねっても冷水しか出ず「ひゃあ。ひゃあ。」と一人孤独に悶絶する羽目に陥ったり、または思い切って冷蔵庫に貼ってあったチラシを頼りにピザを注文したら、店員に「その商品は冬限定でとっくに販売終了となっております」など冷たく言い放たれたりする。

 世知辛い世の中。

 だからポストは常に中身を空にしておくのが好ましいのだが、本当にもうそんな気力も無いくらい、へとへとに疲れきっている時だってあるだろう。

 そんな時に聴きたい曲がある。



GLORIA LYNNE / YOU DON'T HAVE TO BE A TOWER OF STRENGTH (EVEREST)




 ノーザンソウルといえば、63、4年以降の、アップテンポなビートの音楽をイメージする人が多いと思うし、それももちろん間違いではないのだが、イギリスのノーザンソウルシーンではそういう枠にとらわれない本当に多様なサウンドが同じ「ノーザンソウル」として認識され、親しまれている。

 それを面白いと思うか、意味が分からないと思うかで、その後のその人のノーザンソウル人生は決まるといってもよい。

 その多様なサウンドの中には、いわゆる「アーリーソウル」と一般的に呼ばれるサウンドの曲調のものも人気だ。「アーリーソウル」も定義が少し難しいが、おおまかにいえば言葉どおりソウルミュージック黎明期、つまり「ソウルミュージック」という言葉が使われる前の音楽で、その後のソウルの原点となった音楽のこと。バンドサウンドというよりも、オーケストラ、流麗なストリングスなどが使われていたりポピュラー寄りな音なのが主な特徴か。例えばSAM COOKEが遺した音楽などは、ほとんどが「アーリーソウル」といってよいだろう。OTIS REDDINGMGsをバックに箍が外れたようにガッタガッタいうようになる前の、あくまでまだポピュラー音楽のひとつとしての黒人音楽であり、よってある種の抑制が効いているわけだがそこがまたいいんである。

 ノーザンソウルシーンでこういうアーリーソウルや、R&Bなどソウル以前の音楽のサウンドが急激に人気になったのはやはり80年代、Staffordで開催されていた"TOP OF THE WORLD"のDJ(GUY HENNIGANともちろんKEB DARGE)のディスカバー・選曲によるところが大きいだろう。70年代にWIGAN CASINOなんかで人気だったアップテンポなストンパーから、こういったある意味「渋い」(あまり好きな言葉ではない)サウンドへの変化は、ノーザンソウルの歴史におけるもっとも重要なシフトチェンジであったという人は多い。




 今回紹介するのはジャズ・シンガー、GLORIA LYNNE61年録音。お聴きの通りしっとりと歌い上げた曲だが、アップテンポでダンスにも向いている、そのためノーザンソウルとしても人気である。Staffordで好まれていたようなサウンドともまた異なるが、はまるとなんだか中毒性のある曲だ。
 曲はバート・バカラックによるもので、ソウルというよりはポップスといったほうが正しいかもしれない。前途のとおりジャズシンガーであるから、いかにもな作品といえるだろう。

 Gene McDanielsのヒット曲「Tower Of Strength」へのアンサーソングである。もちろんそれもバート・バッカラックが作曲で、まあこの原曲はこの際どうでもよいのだが「TOWER OF STRENGTH」という言葉は気になる。直訳すれば「強さの塔」なわけだが、まあ「強さのカタマリ」って感じかな?
 Geneの曲は大まかにいうと、弱い男の歌だ。僕はTower Of Strengthになりたい、そして君に君の事なんか愛してないんだ、といって、ひざまづいて許しをこう君を背にドアを開けて出て行きたい、でも僕はそんなに強い男じゃない、という内容の歌詞である。

 Gloriaは、「あなたはTower Of Strengthになる必要はない、英雄になんかなならなくていいの」と歌う。あなたがして欲しいことはなんでもするから、それよりわたしを抱きしめて、絶対にはなささないで、とGloriaは続ける。

 ぐっときますよねえ。男性諸君。


 本当ならこういう科白を、和服の美人、例えば若尾文子や山本富士子なんかの昔の大映の女優さんなんかいいですな。に、お酌をしてもらいながら言ってほしい気もするが、もちろんそんなことはないし、今のところ大映時代の若尾文子や山本富士子を自宅に宅配してくれるサービスもなさそうなので、結果このレコードを家で独り聴くことになる。

 へとへとになって疲れきって帰ってきて、このレコードに針を落とすと何だかとてもホッとします。

 明日も頑張りましょう。


 

 ・・・・というわけで、しれっとものすごく久しぶりの更新となってしましましたがこのまましれっと終わります。今後は頑張ります!


 さて次のDJ情報です。

 NIGHT FOX CLUBは7/26土曜日です!影のレギュラー、ADAMも今回参加で盛り上がること間違いないですね。フライヤーはDEE CLARK!

 安定のノーチャージです、是非遊びに来てくださいね。



NIGHT FOX CLUB
Rare 60's Danceable Northern Soul Drop&Moves,
Motown,R&B & 70's Soulful Dancers
http://nightfoxclub.blogspot.jp/

Sat 26th JULY 2014 
Start 19:00~Until 23:30 
@Menphis Kyodai SHIMOKITAZAWA
Admission FREE!!!
http://memphis-kyoudai.blogspot.jp/

DJs
Stormer Tamai (Stormer & THE STOLEN HEARTS)
Akira Sekiguchi
uCjima (DOTS'n'LINE)
Adam Tore
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