2012年11月14日水曜日

【45】冷血

なんと二ヶ月もブログ放ってしまいました。

もう気がついたら11月。

書きたいこと、書くべきこといっぱいあったんですが・・・・

まあ、「ウッシ、最近ブログ更新してないけど、元気かな?」とか「ちゃんとご飯食べてるかな、心配だな?」とか、「アイツが欲しがってたあのレコード、もういらないから、適価で譲ったろうかな?」とかそういう人もたぶんいないと思うので、そこらはさっさとすっとばしてリハビリ的にぼちぼち再開します。

ではリハビリなんでまずは最近手に入れたレコードの話でお茶を濁させていただきます。



というわけでアイク・元祖DV男・ターナー御大にご登場いただきましょう。



♪会いたかった アイクターナー アイクターナー イェイ♪






失礼しました。



IKE TURNER / SHE MADE MY BLOOD RUN COLD







最強・最凶の黒人ギタリスト、アイク・ターナーによる57年リリースのシングル盤です。


いったい、なぜこのような曲が産まれてきたのでしょうか。頭を抱えてしまいます。

口笛を吹いているような音ではじまりますが、これは凍えている男が漏らすうめき声です。

以下、この曲のとても奇妙な歌詞を紹介します。(例によって高卒による非常に不正確な聞き取りなのでそこらへん突っ込まないでください)


She made my blood cold, shed cold tears all through my soul

I went to see my doctor asked him what was wrong
He gave me an examination, I was chilled to my bones
She made my blood cold, shed cold tears all through my soul

He says your kisses freezes my heart, causes my blood to stop
Have I sick with hanging from my eyes I give him ?? all round the clock
She made my blood cold, shed cold tears all through my soul

He checked my blood pressure, he found that I had none
He said "Bring me that woman so she can see what she has done."
She made my blood cold, shed cold tears all through my soul

She came to the doctor's office, ?? him on his head
And before I can give him a warning, he was standing there frozen dead
She made his blood run cold took all the lives right out of his soul

What a chilly woman.....



あの女が俺の血を凍らせてしまった、その冷たい涙で俺の魂を凍りつかせた


俺は医者に行って、診てもらった
検査したら、俺は骨まで凍り付いてた
あの女が俺の血を凍らせてしまった、その冷たい涙が俺の魂を凍りつかせた。

医者は言った、おまえのキスが、俺の心臓を凍らせ、血を凍りつかせんだと。
(ここちょっとわからん)
あの女が俺の血を凍らせてしまった、その冷たい涙が俺の魂を凍りつかせた

医者は俺の血圧を調べた、俺の血圧はゼロ
彼は言った、「その女性を連れてきなさい。原因がわかるはずだ。」
あの女が俺の血を凍らせてしまった。その冷たい涙が俺の魂を凍りつかせた。

彼女は医者のところに現れた、そして医者の頭に(ここ聞き取れない)
俺が注意する前に、もう医者は凍り付いて死んでそこに立っていた
あの女は彼の血を凍らせてしまった、彼の命をすべて奪ってしまった


なんて冷たい女




こういった男女の心の機微に関する悲劇とも喜劇ともつかないようなユニークな歌詞は、ブルーズ音楽にはよく見られるもので特に珍しくは無いのですが、これにはなんだかすごく惹かれました。

初めて聴いたのはもちろん英KENTの名コンピレーション「KING NEW BREED R&B」でした。



うーん本当に名曲ぞろいのすばらしいコンピレーションの最後を、不気味に締めくくっていたのがこの曲。

このコンピレーションに入ってるのですからリズム&ブルーズということになるのでしょうが、他の曲に比べればスローで、ブルーズにより近い感覚がある。このコンピレーションの解説(by Mr. Ady Croasdell)によれば、Screamin' Jay Hawkins "I Put A Spell On You" や Little Willie John "Fever" などの曲の影響だろうとあります。なるほど。ブルーズの乾いた感じや、泥臭い感じが無い。とてもメロディアスで、ダンサンブルで、もっといえばモダンな感覚がある。まあ、そういう音楽をリズム&ブルーズというのか・・・。もちろんブルーズがメロディアスでダンサンブルでモダンな音楽ではないというわけではないのですが、今までのブルーズのダンスとはまったく異なるスタイルだと思うし、そこがまさにNEW BREEDというわけなんでしょうな。それはつまりアイク・ターナーの音楽すべてがそういう感じともいえますが。

とにかく曲中に頻出するギターのフレーズが必殺!過ぎる。歌詞の合間に合いの手のように刻み込まれるこのリフは、声や歌詞よりも、雄弁にこの、なんかとぼけたような、物哀しい物語を語っている。歌っているのはClayton Love、アイクのバンド、KINGS OF RHYTHMのメンバーです。

とにかく寒々しい曲です。これに匹敵する寒さの音楽は高倉健の歌う「網走番外地」か、レインボーマンの劇中歌「ヤマトタケシの歌」くらいしかないのではないかと思う。COLD BLOODというと、トルーマン・カポーティの小説「冷血」をどうしても思い出します。アメリカのど田舎で平和な一家を惨殺した強盗二人についての、ノンフィクション小説ですが、それを考えると更に寒々しい気持ちになります。

歌詞を見ると一見冷たい不実な女に捨てられた男による恨み節という気もしますが、女の冷たい涙により魂が凍らされたともあるので、あるいは男に捨てられて氷女になった女の復讐譚?でもあるのか。

先ほどのコンピレーション盤で聴いてから、速攻ウォントリストに入れました。マンシップのプライスガイドなんかで調べてもそんなに高くなかったのですぐ手に入るだろうと思ってたら、僕と同じ経路でこの曲にヤられた人が多かったのかたまにネットで見かけてもプライスガイドをはるかに上回るけっこうな高値がつき、なかなか手に入れることが出来なかった。先日やっとそこそこのコンディションの盤を思ったよりも安く手に入れることが出来ました。なんでこんな曲が・・・と思う人もいるかもしれませんが、ある種の人間の感覚に強く訴えるような何かが、この曲にはあるのだと思います。

先ほどのYouTubeであがっている画像はKINGレーベルのものですが、この曲は同系のFederalからもイシューがあり、FederalではIKE TURNER & HIS KINGS OF RHYTHM名義でのリリース。僕が手に入れたのはFederal盤。ちなみにフリップはKINGと別の曲。KING盤も欲しいな・・・。

いったいどういう気持ちでアイク・ターナーがこの曲を作ったのか、後の伴侶に対するドメスティックバイオレンスと何か関係があるのか、大変気になるところですがアイクももう故人。氷の女の秘密は墓場まで持ってゆかれました。

アイクターナーは2007年にオーヴァードーズで亡くなりましたが、その葬儀にはかつての伴侶であったティナ・ターナーは現れず、コメントすら残さなかったと聞きます。まあ、男女の間のことは当事者にしかわからぬことでありますから、ティナの姐御が葬儀に出たくなかったのなら私らがどうこういうことではありませんが、デュオを組んでいた頃はあんなにも素晴らしい音楽を生みだした間柄であったふたりが、その片割れの葬儀にも現れないようなことになってしまうというのは大変悲しいことであるように思います。
とにかくDVはよくないよ!もっと話し合おうよ、愛し合おうよ。ラブ・アンド・ピース。という気持ちになる曲ですね。






嘘、嘘。

自分は、なんだかんだでこういう音楽に守られてるんだと思う。このシングルをかければ、不思議と心が落ち着く。安らぎすら感じる。そして、周囲のクソ野郎ども全員をこの音楽が虐殺してくれるような気がする。アイク・ターナーに会いたい。この曲について聞きたい。じゃ、また。

その前にささっと告知。次のDJはNIGHT FOX CLUBです!!
また後日ちゃんとふれますがまずはさくっと。



◆NIGHT FOX CLUB
Rare 60's Danceable Northern Soul Drop&Moves,
Motown,R&B & 70's Soulful Dancers

60年代後期から70年代にかけてのイングランド北部におけるムーヴメントNORTHERN SOUL。そこに見られるSOUL MUSICへの愛情と、熱狂的とも言えるDanceへのこだわり、そんな熱いスタイルに影響を受け、尊敬と憧れと情熱を持って2004年発足。
本国では現在も尚、時代に流される事なく愛され続けている、この普遍のモンスターミュージックの数々を、"英国流黒人音楽の遊び方"として提供する事の出来る、都内随一のパーティー。

奇数月第4土曜日、下北沢メンフィス兄弟にてレギュラー開催。

◆日時:2012年11月24日(土) 19:00~23:00

◆会場:下北沢メンフィス兄弟。
東京都世田谷区代沢5-6-14前田ビルB1A
http://memphis-kyoudai.blogspot.jp/
Tel/Fax03-5486-3461


◆入場無料

◆Guest DJ:Adam Torel

◆DJs:Stormer Tamai,Akira Sekiguchi,Ichi,uCjima

◆NIGHT FOX CLUBブログ
http://nightfoxclub.blogspot.jp/



というわけで相変わらずノーザンソウル、やってますので、皆さん都合がよかったら是非。

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